全国障害者問題研究会奈良県支部大会1998.6.7


第5分科会 
「障害児学校と障害児学級との連携を考える」

参加者 13名(障害児学校教師4、障害児学級教師7、学生1、大学教員1)

レポート

討論の柱

1. 障害児学校の蓄積してきた専門的な教育機能を障害児学級との関係の中でどのように生かしていくのか。
2. 障害児学校に在籍しない子どもにも提供する取り組みの成果と課題を検討し、障害児学校と障害児学級の連携について考える。

討論の内容
はじめに 共同研究者の越野和之氏よりこの分科会の設定理由が述べられた。
「障害児教育とインテグレーション」科学的障害児教育研究会 藤本文朗、渡部昭男
1986労働旬報社のなかの将来の障害児学校二部門構想@障害児教育部門(在籍している)A障害児教育センター部門(在籍していない)を提起している。また、文部省の協力者会議の2次答申でも、早期からの教育相談が提起されている。
盲学校の鈴木英隆先生のレポート発表では、在籍しない子どもの教育相談活動についての報告があった。「15年前には、80名の在籍だったのが現在は60名を割っている。特に小学部は13名から5名になり、専門性が維持できなくなっているなかで、教育相談で小学校中学校に在籍している子どもへのケアを実施している。1983年幼稚部から地元の幼稚園にいった子どもの単眼鏡の指導を継続することになり、在籍しない子どもへの指導が始まった。昨年までは教育相談担当教員の加配をもらっていたが、今年はなくなってしまった。しかし、校内で時間調整して教育相談を続けている。1986年県下の弱視児のアンケート調査を実施した。0.1未満の強度の子どもについてはつかめている。0.3以下0.1の軽度の子どもについてはフォローできていない。このアンケートの結果から、啓発の重要性と小中との連携、学校見学や体験学習と研究活動の大切さが出された。弱視学級は、奈良県では一人でも障害児学級をつくるので、小学校23校中学校2校で全国で一番多い。しかし、はじめて担当した先生が多く、とまどっている学校も多いので、盲学校から地元の学校に出ていった全盲の子に、週1回教育相談でフォローしている。弱視学級の担任は2〜3年で交代することが多く教育の蓄積ができないので、盲学校が中心になり奈良県弱視教育研究会を定期的に行い『奈良の弱視教育』という機関誌を年2回発行している。」などの報告があった。付中の久保田先生より「知的障害をあわせもつ子どもの指導について」の質問が出された。盲学校に在籍する重複の子どもは小学部2名、中学部5名。藤井正紀先生より「奈良市では難聴と言語についてはセンター校方式をとっているが、弱視学級については、そうなっていなくて専門性や教材の蓄積がない。点字の指導や目の訓練など障害児学級では対応できるのか。弱視学級の教育条件のリストアップなど有機的にしていけばいいのでは、・・」という問題提起があった。盲学校の木下先生からは、「案内状等送っているが小中より連絡がなければ盲学校からアプローチできない」という指摘があった。共同研究者の越野先生から週何時間と指導時間帯の質問が出た。週1の教育相談の子は全盲のこが多い。校内体制で時間軽減して22〜23時間の教育相談の時間を作っているが、ケースが増えていったら今の体制では手がいっぱいである。養護学校ではできないだろう。
ろう学校の鈴木直樹先生からは、聴能部と難聴学級との交流についてのレポート報告があった。「聴能部では、補聴器の調整や鼓膜の状態把握などインテグレートした児童への聴力検査を春休みや夏休みに難聴学級の担任にも同伴してもらって実施している。また、きこえの基礎講座や難言研への積極的な参加や、担当者研究会など、難聴学級の先生との関係を密にしている。また、保護者の悩みをくみあげ、キュッドスピーチにこだわらず、親子の共感関係を豊かにしてトータルコミニュケーションで対話の時間をとり援助をしている。インテグレートした小学校と月1回交流している。養護訓練的な内容や障害の受容の話などしている。文化祭などの行事の交流など。児童保護者にどう援助していくかということでは、聴能部で子どもの実態をきちっとつかみ、教師との交流の中で難聴学級との交流をしていっている。」などが報告された。県下の難聴学級の担任が月1回集まっていろんなことを出しあって充実してきている。難聴学級はセンター校になっているところが多く、通級への移行によっても言語と難聴の先生の入れ代わりもあまりないので専門集団というところがある。しかし、郡山市の先生から、ほとんど聴こえない状態のこどもがろう学校から地元の学校に入学してきて大変困り、たまたま、ろう学校から普通学級を希望して転勤してこられた先生にキュッドスピーチができるからと担任をもってもらった学校の例や、難聴学級の担任のなりてがなく担任もころころ変わる例がだされた。高田の小学校の先生からは、原学級保障で入り込みを経験したが大変だったことや、専門性をつける時間や機会が欲しいことなどが出された。藤井先生からは制度的なことも考えていかなければならないなどだされた。南園先生からは「弱視学級の子どもが、月一回火曜日の5限目に車で盲学校に訓練に行っている。単眼鏡や拡大機を使っての読書や、どのように見えているかわからない。生活経験が少ないので、体験の中で教えている」ことなど報告された。盲学校の鈴木先生からは、「月1回なら小学校に出向いていったほうがいいのでは」という提案がだされた。藤井先生からは、奈良県では教師を増やしたらということで障害種別に学級設置をふやしてきたが、教育内容や制度を変えていかなくてはならない。多様なニーズにあわせた交流の必要性が提案された。奈良市の就学指導委員会には盲学校や養護学校の先生も入っている例がだされた。
新先生からは、弱視学級の子どもはずっと普通学級にいて、たまにしか付き添わないがそれでいいのかなあという指摘や、新担任者研修もあるが、それよりも一日盲学校にいかせてもらっやほうが研修になるのでは。親の意識の壁を感じる。などがだされた。知的障害養護学校も進路とかに限定しないで、日頃から教育相談の体制を作ってきているが、条件を整備しないとうけとめられないのでは。また、奈良市の担任者会に西ノ京養護学校の先生が参加するようになり連携を密にしていることがだされた。
まとめ
在籍しない生徒にもすでに盲・ろう学校で教育相談や聴能検査、交流という形で行われてきたということは、誇るべきことで、これを広げていく必要がある。そのための条件をつくりかえていく必要性を制度の問題とかかわって論議された。また、在籍しない子どもの教育相談が、ニーズに答える教育実践であると位置づけることが大切だ。そこで提供されるサービスに適切なことばをつける必要がある。ろう学校では交流としてまた弱視学級としては訓練にいくというふうにいっているが、在籍はしていないけれど教育実践として位置づけ、きちんと整理していくべき課題がある。継続的に研究していく必要がある。障害児学級の先生には専門性をみにつける機会が保障されていないが、担任の先生を1年間研修に出している例などがある。ふたつの課題をすすめるために、小中の障害児学級との連携を全障研としてのとりくみを強める必がある。(文責:上嶋)


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