モンテ微塾故中村佐喜雄先生の記録

以下の文は、山陽放送とNHK岡山のテレビで放送されたモンテ微塾の番組のビデオからテープをおこしてワープロで打ち文章化したものです。著作権はそれぞれの放送局に属します。
山陽放送は中村先生がモンテ微塾を開設された当初 1987年昭和62年放送
NHK岡山は2年目1988年放送


音楽療法で障害児教育

山陽放送

コミュニティチャンネル「スタジオ11」

1987年放送

司会「今日最初の話題です。岡山市下足守にモンテ微塾足守仲良しホームという塾を開いて障害児などの教育に取り組んでいらしゃいます中村佐喜雄さんに今日はスタジオにおこしいただきました。こんにちは、ようこそいらっしゃいました。どうぞ、よろしくおねがいします。えー中村さんは奈良県のご出身で39年間奈良県下で小学校の先生を勤められまして、今年の三月、退職と同時にですね、ま、いってみれば、縁もゆかりもない岡山に来られて、第二の人生を、おくられることになったわけなんですけれども、この岡山で新しい教育に取り組むことになったいきさつというのはどういうところからですか?」

中村先生「そうですね。ちさい子供さんというのは、特に問題のお持ちのある方は、お母さんの教育が必要でして、それは学校ではどうしてもできなくて、私はそれを死ぬまでにやってみたいと思っておりましてものですから、環境の良い所を選んでおりまして、この地を選見つけた訳です。」

司会「岡山に非常に教育環境としてすばらしい場所があるということで。」

中村先生「そういうことで選ばしていただきました。」

司会「そうですか、中村さんの塾は、実は私財をつぎこんでつくられた訳なんですけど、塾の名前がモンテ微塾足守仲良しホームという非常に一見ユニークな名前がついているんですが?」

司会「微塾というのはどういう意味なんですか?」

中村先生「微塾といいますのは、教育をおこなうにつきまして小さい子の教育ですのでカリキュラムのスッテプが非常に細かい。顕微鏡的な細かさをもっている訳です。ですからまあ微塾という名前にしたわけですね。それから、ここではモンテッソーリということが大切でして、先ほどの子供さんもこの教育に基づいている訳でありまして、健常児の教育と障害をお持ちの方の教育と同時に教育を行う訳です。モンテッソーリ教育法といいますのは、これはもともと健常児の幼児教育なんですこれはね。ですから、うちではここでモンテッソーリ教育法人間教育法というんですが、これでですね両者一体になっていこうという訳なんです。」

司会「モンテッソーリ教育法というのは、これはお医者さんのお名前モンテッソーリ」

中村先生「モンテッソリという百年前のお医者さんですが、障害児教育の教育者でもありました。いわゆる、この方は動物面にメスを入れられ。この図がありますが、お医者さんですから人間は動物であるということで、人間の体質を改善することによって人間性をりっぱにするいう方法でして、これには3つの原則がありまして、ひとつは、環境を整える。ですから家庭環境お父さんお母さんあるいは地域社会、ですから足守が選ばれた訳ですね。環境の良い所。そして、第二番目は教材教具を開発する。こどもさんを伸ばすについて最もいい教材はなんであるか。三つめは、子供は人間すべて動物でありますから、尊い尊い動物ですから、動物特有の衝動性を大切にしながら、自由にのびのびとした教育おこなう。そして、この三つめは、特に本人の力で自分を伸ばす。という3つの原則があります。」



司会「まあその、ライオンのまんまでは社会生活の中でいろいろ支障をきたしますんで、そんな中で環境に適応できるような人間性を育てていくという意味がある訳ですか?」

中村先生「そうです、動物といえども人間ですから、この衝動性を調節できる人間らしい教育を行う訳なんですね。」

司会「これもひとつの教材をいろいろ工夫するというひとつの教材なんですか?」

中村先生「これは、指導者用の教材です。」

司会「先生方も塾に来られることがあるんですか?」

中村先生「子供さんお連れになるときに先生が一緒においでになられますと、私も勉強さしてもらい、先生も勉強でき、お互いに得ですからね。後から効果が良くあがる訳です。」

司会「今何人ぐらいの子供たちがいらしゃるんですか、塾には?」

中村先生「37から38人というとこですかね」

司会「年令は、もうそれぞれまちまちですか?」

中村先生「そうです、2歳7ケ月から20歳くらいまでの方ですかね。」

司会「それに親御さんや先生を含めていろんな形で教育に取り組んでいらっしゃる。」

中村先生「そして、問題のお持ちになる方と、問題のなにもお持ちでない普通の健常な方の学習指導にもおいでになります。」

司会「で、その現在先生がやってらっしゃる音楽療法ですね、さきほどピアノをひいてらっしゃったのも、モンテッソーリの応用ということですか?」

中村先生「そうですね、衝動性を高めたりリラックスさせたり、その子供に教育するにふさわしものをピアノによってつくりだす。ですから私が教育しているように見えますが、その子供さんから学んでいる訳です。そうでないと子供が受け入れませんから。絶えず、その子供さんに、なにがいいの?あんたこれでいいの?と問いかけて、ニッコリ笑ってくれたら、お母さんこれだ。これでいこうといく訳。」

司会「そういう意味では子供さんに教材を選ばせるというそういう形もある。」

中村先生「そうです、それがモンテッソーリの第2番目の目標です。」

司会「中村さんは、昭和48年に奈良県で教育選奨を受賞されているんですが、それでは、普段中村先生がどのように教育されているかその様子をみなさんに見てみたいと思います。」

司会「ここが、岡山市下足守。これはもともと農家だったところですか。そこを改造なさった訳ですね。」

司会「きこえてきましたね」

司会「ピアノが鳴っています。」

司会「これはどういう教育をなさっているんですか?」

中村先生「お母さんと子供さんと私とスクラムをくんでいますからここで言葉の指導をしています。これは笛を使っていますが、音楽の指導でなく人格をつくっています。将来自立に必要な人格、好ましい人格ですね。」

司会「先生マスクをおかけになっているのは、これはなにか意味があるんですか?」

中村先生「まあ歯が悪いことと、それから子供の顔を接近して指導しますので、つばがとんだりしないように衛生的なために使っています。」

司会「これも先生のポリシーのひとつな訳ですね。このマスクひとつも。必ず教育実践ではマスクを使われる。」

中村先生「はいそうです。必ずマスクを使います。お互いに安心です。」

司会「今度はこれは体操みたいですね。」

中村先生「これは、やはり人格づくり、それから、からだの機能を調節する。特に自立に必要な指示命令に従うということをお母さんがやている。親密なお母さんがやっている訳なんです。私ではちょっとじょうずにできませんね。お母さんだからできる訳です。」

司会「お母さんの役割というのはとっても大きいですね。」

中村先生「大切ですねえ。お母さんがしっかりすると子供が全然違うものになりますね。」

中村先生「この子は、私のつくったテープのほうが好きですのでテープでやっています。」

司会「こうしたからだを動かしたり教育の中で音楽の果たす役割っていうのはどういうことなんですか?」

中村先生「情緒の安定、それから集中力を増しますね。一般に考えますと音楽はやかましいのでじゃまになるのではないか、そうではなく集中力が増します。まずその子にあったものを使いますから。」

司会「じゃ、実際に言葉の指導にも音楽をきかせながらという」

中村先生「雑念を消してしまう。だから集中します。」

司会「たとえば、ながら勉強といいましてね。音楽がなってたら気が散るのかなと思いますが。そうじゃないんですか?」

中村先生「その子にあったものは、トランキライザーの役目を果たします。」

司会「つづいて、この子は、何月何日というボードがありますね。」

中村先生「自立に必要な国語能力をつけています。」

司会「年令も様々ですね」「このお子さんのケースでは、どういうことをやっておられるんですか?」

中村先生「やはり、対話によってコミニュケーションの力をつけながら、情緒の安定をはかりながら、生活能力まあ国語面ですね、いまのは、」「お話、歌、カードなどいろいろその子が喜ぶものを使います。」

司会「この子にあう音楽を選び、教材に合う音楽を選ぶということになるんでえすね。」

中村先生「そうなんです。絵カードをくってますね。お母さんが一生懸命先生役をしています。だから私が先生でなくお母さんの助手という感じですね。お母さんが最高の先生ですから。」

司会「でも、中村先生もね、ピアノの伴奏をしながらいろいろしゃべりながら指導しながらというのはたいへんですね。」

中村先生「そうなんです。でも、こどもが喜んでくれるとやってて楽しいものですよ。」

司会「来られた時と帰れたときとの表情というのは子供さんはちがいますか?」

中村先生「元気出してね、よろこんでニコニコなって帰ってくれますね。」

司会「ひじょうに楽しそうに興味をもって子供達が取り組んでいるてふうに見えますね。」

中村先生「それがモンテソーリの本質ですから。」

司会「これは、だいたい一人のこどもについて時間はどれくらいかけるんですか?」

中村先生「だいたい10分ですね。この治療はね。」

司会「あまり長いとよくないんですか?」

中村先生「そうなんです。十分させますとね、かえって次のやる気をなくしますので、タイマーで切ってしまいますね。」

司会「たとえば本なんかを読んでましたら途中で終わってしまうていうことがあるんじゃないですか。」

中村先生「そうですね。ある時点で切ってしまって、ああ次も読みたいのになあというのはまた帰ってお母さんとやりなさいということになりますね。」

司会「逆に、全ー部、おなかいっぱいたべてしまうと良くないと言う。」

中村先生「そうなんですね。」「国語指導ですね。健常児の国語指導ね。」「やはり、お母さんと一緒に文章の読解力を高めています。」

司会「ここでも音楽が使われているんですね。」

司会「リラックスするための音楽。」

中村先生「そうです。リラックスと集中、両方しなくちゃいけません。リラックスして眠ってしまっては困りますから。不思議な能力を持つんですねえ。音楽って。」「同じく、国語の能力をつけていますね。お母さんも一緒になって楽しくね。これは小学生が一番上ですね。これが大きくなったらできません。小さい時からお母さんの特権ですから。」

司会「無論、年令に合わせてカリキュラムの内容は違う訳ですか。」

中村先生「そうです。それが微塾の意味ね。」

司会「細分化されたカリキュラム」

中村先生「そうですねえ。」「この方も問題をお持ちでない方の国語指導で、これによって読解力と発表力をつけます。」

司会「さきほど一人のお子さんが10分というお話がありましたけれど、一週間単位でそういうのが何回か続いていくんですか?」

中村先生「一週間に一回きてもらっています。」

司会「一週間に一度。一度10分?」

中村先生「音楽療法は10分。そして後、これに附随した訓練が1時間ぐらいあります。そして、いろいろ親の指導がありまして、合計1時間半が一セット。そして、宿題をもらって帰る。次ぎ来て宿題を調べ、不合格になりましたらまあそれでおしまい。来なくてよろしいということになります。ですから私たち必死になって腕を組んでいます。」「これは、言葉の発音を直しています。英語を使って。」

司会「英語を使うというのは意味があるんですか?」

中村先生「英語をこの子はもう少し勉強したほうがいいというので、同時にやっています。発音の強制と英語の学力をつける、そうすると能率がいいでしょう。」

司会「なるほど。」

中村先生「良くなっている子です。」

司会「おもしろい機械を使ってらっしゃるんですね。」

中村先生「これは血圧計のゴムをはずしてきて、お酒を計る漏斗を引っ付けてやったんです。」

司会「あれはなにをされてるんですか?」

中村先生「耳が悪いので細かい発声を聞き取って強制する。教育の道具です。私のね。」

司会「なるほどねえ」「じゃ、道具を自分のアイデアでいろいろ作ってらっしゃるんでね。」

中村先生「その子供さんに喜んでもらう物を。子供さんに受け入れられなければ、どんな良いものでも教育に使えませんからね。」

司会「子供達がよろこべば、お、これだ。となる訳ですね。」

中村先生「だから、見ておって、ニッコリ笑ってくれる。ニッコリ笑ってくれる。」

司会「どうですか、御父兄のみなさんはどういうふうなことをおっしゃってますか?」

中村先生「お陰様で、勇気だしていていただきますのでうれしいですね。勇気だしていただいたら、子供が良くなりますから。これが最高の喜びですね。学校でできませんでしたこういうことは。」

司会「退職と同時に岡山に来られて、新しい環境での教育に取り組んでいらっしゃる訳なんですけど、これからモンテ微塾、どういうふうな形に発展させて行かれるおつもりですか?」

中村先生「そうですね。やはりこういうように教育、特に幼児教育をやっていきたいということと、成人の問題をお持ちになる方のミニ作業所のようなものに発展させていきたいと思いますね。自力でやる。他人の援助を受けないで自分の力で立っていくもの、親と一緒に協力して、そういう方向、ミニ作業所、授産所のようなものにもっていきたいですね。私が死んでからそのようになって欲しいと思います。」

司会「いま、60才ですね。」

中村先生「そうです。あと17年間ね。平均寿命までやらしていただきたい。」

司会「なるほど。もう平均寿命の計算まで。」

中村先生「そして、後は、特別養護老人ホーム。これも岡山はいいところでしてね。安心してね。」

司会「じゃもう、とことん取り組んでいくと。子供達と手をくんで、お母さん方と手を組んでということですね。今日は、ユニークな教育に今、取り組んでいらっしゃいますモンテ微塾足守仲良しホームの中村先生にいろいろとお話を伺いしました。どうもこれからもがんばって下さい。ありがとうございました。」

中村先生「どうもありがとうございました。」(山陽放送局)


モンテ微塾足守仲良しホーム

NHK岡山放送局

1988年放送


登校拒否児など60人が集まるモンテ微塾。
ここでは、音楽の快い刺激で、子供達の心を開かせようという試みが行われています。塾がスタートして1年9ケ月。自閉症の幼児がことばをしゃべったり、登校拒否を続けていた中学生が、学校に通うようになりました。指導にあったっているのは、中村佐喜雄さん。奈良県の小学校で25年のあいだ障害児教育一筋にとりくんできました。2年前に定年をむかえ、退職後も今までの経験を生かした教育を続けたいと塾を開くことにしたのです。モンテ微塾は岡山市郊外の足守にあります。建物は10年以上空家だった古い農家。中村さんは豊かな自然の中にあるこの家が気に入り、知人もいない岡山で第二の人生をはじめることにしました。一人暮らしの中村さんは、障害児を孫のように思っているといいます。恩給で暮らしながら月々2000円あまりの維持費を集めるだけで指導を行っています。朝9時から開かれているこの塾で、子供に直接教えるのは母親の役目です。先生は傍らで見守り、アドバイスするだけです。「親が教師だ、私は助手。親が教授で、私は助教授。親子の間柄というのは、一番安心できる。だから、グイグイグイグイと毎日やってもらえればいい訳。そして成果があがったら、お母さんようがんばったね。先生うれしいよと、一緒に喜ぶ。」音楽療法の教室が始まりました。中村さんは一緒に歌を歌ったり楽器を演奏したりしながら、子供がよろこんで反応する音やリズムをつかみます。そして、その音やリズムを繰り返し聞かせ訓練することで、殻にとじこもった子供達の積極性を引き出そうとしています。歌や楽器のほかにも独特の訓練が行われています。ピアノに合わせ国語の教科書を朗読するのです。ピアノのメロディに引き出されるように情景がうかんできます。子供達は訓練を繰り返すうちに、音楽の助けを借りて、短い文章ならば暗唱することもできるようになります。「いままでは、お母さんお母さんと言う感じで頼ってたんですが、それがぼくするとすごくなんでも自分でする気になってくれたりとかありますね。」「知らないひとならすぐ逃げてました。知らない家にいくのもいやがりましたし。」塾の評判を聞いて岡山県の各地から子供がやってくるようになりました。最近では遠く大阪や広島からやってくる親子も現れています。週に一回通ってくる県外からの子供のために宿泊施設もつくりました。ベッドメークやそうじは、近所のお母さんたちがボランティアで手伝ってくれています。中村さんの音楽療法の試みは、少しずつ地元の理解も得られるようになっていきました。「キラキラ、キラキラしたね、してきなものが見えるんです。障害者や子供と接してたら、それで、それをのばして、それを自立に役立てよう。そして、親が死んだ時に、後ですね、施設にいってもどこに行ってもいいから。人間らしい暮らし、生きがいを、ね、学ばしたいなあと思って。」子供を最終的に導けるのは、母親しかいない、という中村さん。これからはここで学んだ母親一人ひとりが先生となって、音楽療法の輪を広げて欲しいと話していました。(報告 倉森京子/NHK岡山)


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