2000年度実践記録

 
  生徒の意欲を大切にした授業の実践より

                      奈良市立登美ヶ丘中学校
                      みさわ学級  上嶋光春


<はじめに>

 本校障害児学級のみさわ学級は、昨年度1名卒業生を送りだし学級がなくなる予定だったが、幸いにも校区内に引っ越してきた一年生一名を迎え、今年度も引き続き担任(情緒学級)をもつことになった。小学校からの課題を引き継いでつぎのような指導方針と指導計画をたてて取り組んだ。以下はその実践のまとめである。

<指導の基本的な方針> 

 生活面では、人に対して積極的に話しかける良い面を伸ばしながら基本的な生活習慣の確立を図っていく。原学級との交流を積極的にすすめるが、ボタンはめなどの身辺処理の苦手なところに配慮しながら、本人のペースに合わせた指導をしていく。

 学習面では、豊かな話し言葉を伸ばしつつ、文字言語の獲得をめざしていく。特に、指先の力が弱く、書くことが苦手なので、手・指の力をつける。また、パソコン等を活用して数量の認識力を高め、さらに持っている力を引き出したい。

 体力面では、体力づくりに努め、動作法等を活用して情緒の安定を図っていく。

 以上の点から、情緒の安定を図りながら、能力に応じた積み重ね学習と同時に、思考力や自己表現力を高める指導にあたりたい。また、交流学習を通して、より社会性を培っていきたい。


<指導計画>

  長期目標(1年間) 指導の場面 課題・手だて



1.足腰を鍛える
2.しっかり歩く
3.手指の操作力をつける
4.持久力をつける
5.身心の柔軟性をつける
生活 体育
社会
生活 理科
生活 体育
生活
体力づくり
校外を歩く
ペグボード 草引き
ランニング
動作法



1.身辺自立 衣服の着脱を自分でする。
2.ボタンを自分ではめる。
3.靴の左右をまちがわない。
4.衣服の前後をまちがわない。
5.自分でバンドをはめる。
6.洋式トイレに自分でいってする。
7.カッターシャツを自分でズボンにいれる。
8.そうじをしっかりする。
9.集団行動の力をつける。
生活
生活 体育
生活
生活 体育
生活
生活
生活
そうじ
1-1朝の会
みさわ学級でゆっく
り時間をとって着替
える
すこしずつ自分でで
きるようにする

1組の班で
1組のみんなと









1.話ことばを豊かにする
2.ひらがなをしっかり読む
3.ひらがなを書けるようになる
4.カタカナを読めるようになる
5.簡単な漢字を読めるようになる
6.時計をよめるようになる
7.数字1から10まで書けるようになる
8.数を数える。20まで、100まで
9.はめ板で図形の上下左右を理解する
10.学校のまわりの地域を知る
11.野菜や花の栽培作業に興味をもつ
12.技術家庭の話をしっかり聞く
13.道具を使って切ったりはったりする
14.仲間と一緒に絵の具で色をぬる
15.みんなと大きな声で歌を歌う
16.簡単な英語を聞いて覚える
国語




数学



社会
理科
1-1技家
技術家庭
1-1美術
1-1音楽
英語

読み聞かせ
本読み
自分のなまえ
働く車の名前
友達の名前の漢字
時計カード
数字練習
パソコン
はめ板
学校の周辺散策
畑や花壇の世話
1組の技術家庭
みさわ、入り込み
ポスターカラー等
聞いて歌を覚える
英語アニメビデオ

※個別の指導計画として年度当初に立案したが、短期・中期の計画の目標については、現在検討中


<時間割り>

   
せいかつ
生活
上嶋
すうがく
数学
上嶋
 ぎじゅつ
1-1技術
  かてい
1-1家庭
  しゃかい
社会
上嶋
 
 どうとく
1-1道徳
たいいく
1-1体育
せいかつ
生活
上嶋
りか
理科
上嶋
  すうがく
数学
上嶋
こくご
国語
上嶋
こくご
国語
上嶋
かてい
家庭
りか
理科
上嶋
たいいく
1-1体育
   おんがく
1-1音楽
 
 びじゅつ
1-1美術
上嶋
 びじゅつ
1-1美術
上嶋
こくご
国語
すうがく
数学
上嶋
  ぎじゅつ
技術
しょしゃ
書写
上嶋
えいご
英語
 おんがく
1-1音楽
こくご
国語
上嶋
  しゃかい
社会
上嶋
せいかつ
生活
上嶋
たいいく
1-1体育
すうがく
数学
上嶋
 がっかつ
1-1学活
 


  (下段の松、前、浦などは障担以外の先生方の頭文字)


  国語 社会 数学 理科 英語 音楽 美術 体育 技家 生活 書写 学活 道徳 合計
みさわ 4 2 4 2 1         3 1     19
原学級           2 2 3 2     1 1 11
合 計 4 2 4 2 1 2 2 3 4 3 1 1 1 30



<教科での実践例>

生活  体操服に着替える
    ランニング・トランポリン(2学期よりなわとび)・動作法・ペグ
    ボード 自由な時間  車いす・三輪車に乗る ダンボール
国語  自分の名前をひらがなで書く練習
    俳句づくり 友達の名前の漢字のよみ 教科の漢字よみ
数学  木のパズル 時計 何時 数字1〜10 お金
理科  体操服に着替える 畑作業 くわスコップで耕す 一輪車で運ぶ
社会  学校の周りの見学
    働く車や働く人たち
    バスに乗って西部図書館
    環境清美工場の見学
英語  英語のビデオを見る  ディズニーアニメ ミッキーマウス 101
    匹ワンちゃん  ピーターパン トイストーリー
技術  木製くるまの模型の色ぬり組み立て
家庭  フェルトで桃太郎の絵本づくり 牛乳パックの工作 クリスマスリ
    ースづくり
書写  毎時間、書きたい字を考えて、鉛筆で書いてもらった上から筆でな
    ぞって書く

※音楽・体育・美術・技術家庭は、原学級でクラスで一緒に受ける。


<実践の中で大切にしてきたこと>

○視覚的な情報よりも聴覚的な情報のほうが得意という生徒の特性をしっかり把握して取り組む。
○生徒のやりたいという意欲や興味関心を大切にする。
○教科や授業にとらわれないで総合的にとらえる。
○発達の根っこを太らせることを大切にする。
○実際に外にでて見たり聞いたりする体験を大切にする。


<取り組みの成果>

○にがてなボタンも、はじめは体操服に着替える時に必ず手伝っていたが、現在では自分一人で早く着替えられるようになった。体操服の前後もまちがわずにできている。体操服から制服に着替えるのもカッターシャツの一番上のボタン以外は自分ではめられるようになった。学生服の大きなボタンは、入学当初はなかなか時間がかかりいつも手伝っていたが現在では自分ですべてできるようになった。

○ひらがなで名字がほほかけてきた。話し言葉が豊かなのでその日にあったことを簡単な俳句のようなものを口頭で言ってもらいそれを教師がワープロに打っている。また、ひらがなはみんな読めるが、国、数、理、英などの教科名の漢字を読めるように練習中。また、書くことが苦手でなかなかすすまないが、いつも班の友達に連絡帳(明日の時間割り)を書いてもらっているので、ひらがなで「こく」「すう」など自分で連絡帳が書けるようになることをめざしている。毎日の時間わりは、いつも聞いて覚えて行動しているが、最近はひらがなは読めるので黒板に書いた時間割りをみて行動できている。

○車が好きなので、その興味を生かし社会では、クレーン車やミキサー車がくる近くの宅地造成の工事現場に実際に見に行ったり、バスに乗る練習を兼ねて近くの西部図書館に行ったり、清掃車のある清掃工場に実際に見学に行ったりなど、実際に見たり体験したりするなかで意欲的に学習に取り組めている。

○手指の操作性を高めるために、休み時間に車の広告の切り抜きや、ダンボールをハサミで細かく切ってマジックで色ぬりすることに一生懸命にとりくんでいる。それを利用して交流集会のスローガンを作った。(右の画像参照)また、レゴブロックで遊んだりすることにも意欲的に取り組んでいる。

○たまたま生徒の親戚の引っ越しでたくさんたまったアート引っ越しセンターのダンボール箱をいっぱい家からもってきてもらい、それを使って家やトラックなどを作るのが好きでほんとうに意欲的に取り組んでいる。

○理科では、畑作業が大好きで、体操服に早く着替えて、一輪車にくわやスコップの道具を積んで準備をすすんでやり、とても意欲的に取り組めている。じゃがいもや、さつまいも、ニンジン、ピーマン、カボチャなどの野菜がとれて、調理実習の材料に使って食べた。たいへん意欲的に取り組めた。


<今後の課題>

○体力づくりでは、しっかり歩いたり、ランニングなど走ることがまだまだ必要である。

○生活のランニング・トランポリン(後半はなわとび)・動作法・ペグボードという授業の流れに、興味がいろんなところに行ってしまって一定しなかったが、最近は集中してペグボードに取り組めるようになってきた。動作法も教育研究所で少し指導してもらってからは、ゆっくり腕を動かせるようになってきたが、さらに定着させ、レパートリーを増やしていくことが必要である。

○一人学級ということで、近くの障害児学級との交流をもっと増やしていく必要がある。

○パソコンの利用ということでは、いろんな所に興味がいってボタンやアイコンをあちこち押してなかなか集中して取り組めないが、すこしづつ活用していきたい。
 また、みさわ学級の教室に奈良市教育委員会の「まなびかがやきネット」のインターネットのLAN配線を職員室から100m伸ばし、みさわ学級のパソコン(Mac)でもインターネットが使えるようになったのでこの活用もしていきたい。デジタルカメラを活用して毎週の予定表に写真をはりつけたり、パソコンで画像をみたりなど、将来的にはみさわ学級の様子をホームページ(ただし校内のみ)にして、学級新聞の代わりとして活用できればと思っている。


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