2001年度障害児教育実践記録

 パソコン及びインターネットの活用について

                   奈良市立登美ケ丘中学校
                   みさわ学級  上嶋光春

1.はじめに
 本校の障害児学級では早くからパソコンを活用した授業にとりくんできた。さらに昨年度からは、学校にインターネットが接続され、LANで延長線を引き、障害児学級でもインターネットができるようになった。2005年にはあらゆる授業でパソコン及びインターネットを教員・生徒が授業で活用できるようにとミレニアム・プロジェクト『教育の情報化』が始まっているが、それに向けて本校障害児学級でのパソコン及びインターネットの活用についてまとめてみたい。

2.本校障害児学級のパソコン環境の到達点

 本校の障害児学級にパソコンを導入したのは1994年度の3学期で、Macintosh Performa575を導入した。その後、障害者とコンピュータ利用教育研究会の自主教材集CD-ROMや市販のCD-ROM教材ソフトなどを購入して積極的に授業に活用してきた。ハードの面では、EPSONのプリンターPM2000CやスキャナーGT7000Sなど年々充実してきた。1999年度までのこの間の取り組みは1999年度の実践記録「パソコンの活用の変遷と21世紀にむかっての課題」に詳しく掲載している。http://member.nifty.ne.jp/Arc/jissen99.html

その時点では、まだ学校にインターネットが接続されていなかった。インターネットが正式に学校につながったのは2000年9月からで、奈良市の教育委員会に「まなび・びかがやきネット」のサーバーが開設されてからである。しかし職員室までしかつながっていなかったので、障害児学級までLANコードを100m延ばして、学級でもインターネットが出来るようになったのは、2000年12月であった。障害児学級でインタ−ネットが使えるようになって飛躍的にパソコンの活用が拡大した。また、2001年1月には障害児学級に新しいパソコンiMacDVを導入することができハード的にも大きな飛躍ができた。このiMacDVにはFirewire端子が装備されていてデジタルムービーの編集ができるようになった。また、同時に学校の視聴覚でCANONのデジタルムービーIXY-DVを購入してもらい動画をこのiMacのiMovie2というソフトで編集することができるようになった。このDVビデオ編集には大容量のハードディスクがいるので外付けのFirewire60GBのハードディスクと、20倍速のCD-RWロジテックLCW-Y2010BFUを2001年度の7月に購入した。また、学校でも総合学習にむけてCANONのデジタルカメラPower Shot10Aを10台購入するなどハード面で飛躍的に充実したおかげで、パソコンをフルに活用できる環境が整った。
 また、ソフトの面でも、積極的に毎年ソフトを購入して充実してきた。以下はその一部だが、主にCD-ROM教材を中心に現在、15枚のソフトがそろっている。 現在保有CD-ROM教材は、「英会話文法」「くるりんピック」「スモッカの日本の旅」「1度で覚えるワード・エクセル・インターネット」「スモッカのらくらくタイピング」「スモッカとPlayEnglish」「スモッカの魔法の島」「ジャックと英語の木2」「7時間でわかる小学6年分の算数」「スモッカと知恵の木 かず」「スモッカの世界一周」「スモッカと漢字の島 ジパング」「スモッカの知恵の木 かたち」「スモッカの玉手箱」「スモッカの大冒険」以上 CAIメディア共同開発http://www.smocca.co.jp/
「ちびっこくらぶ」がくげい http://www.gakugei.co.jp/

3.授業での活用の実践例
 (1)CD-ROM教材の活用例
 <すうがく>
 がくげいの「ちびっこくらぶ」のなかの「ちびっこデーパート」でのお買い物はエレベーターで地下の食品売り場に行って、好きなものを買ってお金をはらう。例として180円のケーキを100円玉1枚、50円玉1枚と10円玉3枚はらうといふうに楽しみながら学習ができる生徒の好きな教材である。お金の学習に非常に有効なソフトである。また、数字の6や8を書く筆順をゴーカートにみたてて練習するコーナーもあり、数字を書くのが苦手な生徒にも役立っている。
<こくご>
 「ちびっこあいうえお」の中のひらがなの筆順をマウスでなぞっていきながら文字の学習ができる「もじもじハムチュー」は、点線をなぞらなければ書けない生徒も楽しみながら、学習できるひらがな学習にはとても役立っている。まだ、カタカナの学習もあり今後活用していきたい。
<その他>
 「ちびっこどうぶつえん」は、動物の動画を使ったクイズ形式の理科学習ができる。「ちびっここうつうあんぜん」は交通ルールをやさしく学べるので役立っている。
 このように、就学前の時期の発達課題を持つ生徒にとって「ちびっこくらぶ」は最適なCD-ROM教材である。
 今まで実践で実績のあるCD-ROM教材としては、「7時間で分かる小学6年分の算数」と「スモッカの魔法の島」がある。ともにCAIメディア共同開発のCD-ROM教材で「7時間でわかる小学6年分の算数」は、ゲーム形式で、小学校1年生から6年生までの問題をクリヤーしていくソフトで、生徒が意欲的にとりくんで人気がある。 また、「スモッカの魔法の島」は、英語の学習ソフトだが、スモッカという親しみやすいキャラクターがABCから英語単語まで、楽しみながら学習できこれも障害児学級では実績のあるソフトの一つである。

(2)インターネットの活用例
 はたらく車が大好きな生徒の興味関心を大切にして、インターネットのYahooではたらく車を検索して「はたらく車の塗り絵」のサイトを発見。早速、プリンターで印刷をして塗り絵を楽しんだ。何回もアクセスするうちに自分で欲しいはたらく車をクリックしてプリントするパソコンの操作を自然と身につけた。また、家でミニカーを集めているので、トミカのサイトにアクセスして、好きな車の画像をダウンロードして印刷するのにもインターネットを活用した。
 http://www4.ocn.ne.jp/~bridge7/nurie/nuriefurem.html
 また、社会見学やみかん狩りなど電車に乗って出かける時には、路線と時刻表の検索サイトを利用して、運賃や乗り継ぎ時間などを事前に調べたり、見学場所の事前学習にも利用している。
 また、生徒のお父さんからインタ−ネットのメールで行事に行って帰ってきた子供の様子や感想を送ってもらい、家庭との連絡の方法としてもインターネットの活用は今後ますます有効のように思う。

(3)スキャナーやデジタルカメラの活用例


 図鑑の中のはたらく車のページを取り込んで、プリントアウトしてそれをはさみで切り抜き、交流集会のスローガンに使った。家でも車の広告の切り抜きをよくしているので、上手にはさみを使って切り抜きに集中して取り組めた。奈良市内の小中60校がそれぞれ一文字ずつ工夫してスローガンの文字を交流集会にもちよるが、本校は「の」の字があたり周りに切り抜いたはたらく車を貼って作った。


 また、毎週時間割の週予定を家に配布しているが、そこに行事や授業風景をデジタルカメラで撮った写真を、パソコンで取り込み貼り付けて、カラー印刷して持って帰らせている。ここでも、スキャナーやデジタルカメラがたいへん役立っている。また、デジタルカメラを生徒自身にも持たせて興味のある飛行場ではたらく車を実際に撮影したり積極的に活用している。


(4)デジタルビデオムービーの活用例

 学校の視聴覚で購入してもらったCANONのデジタルムービーIXY-DVを活用して、みさわの社会見学で郵便局・消防署や伊丹空港に行ったところをビデオに撮った。学校で見るだけでなく、iMacのiMovie2でビデオ編集してCD-Rに焼いて家庭で見てもらうのにも活用している。E-Mail用に圧縮して将来はWebで公開できればと思っている。パソコンでのビデオ編集は、障害児学級の合同行事(宿泊訓練・交流集会・3年生を送る会)の記録でも大変役立っている。パソコンで簡単にビデオ編集ができるようになったので、今後もどしどし活用していきたい。デジタルカメラでは音や動きがなく、あまり興味を持たなかった生徒も、ビデオの動画にすると、感動がよみがえりイキイキと集中して見ていて良い教材になっている。

4.今後の課題
 インターネットが学校に接続されたが、学校のホームページはまだ開設できていない。個人情報保護の制約があって、インタ−ネットでの公開には慎重にならざるをえないが、奈良市の「まなび・びかがやきネット」の中だけの内部サーバにホームページを開設すれば奈良市内の学校だけに公開できるなどの方法を活用して、積極的にホームページを作成し活用していきたい。障害児学級の学級通信をホームページで発信して校内での啓発や親やPTA・通常学級への啓蒙にも役立てばと思っている。また、パスワードをかけたりして通常の印刷物で配布している毎週の予定表や連絡帳をWeb化していつでも見られるようにして、家庭にも普及しているインターネットをもっと日常的に活用できればと思っている。そうすることでもっと保護者との連絡やコミニュケーションにインターネットが役立つと思っている。また、インターネットのテレビ電話による離れた他校の障害児学級どうしの遠隔合同授業ができればとも考えている。少人数学級の短所を補う上でインターネットはまだまだ可能性を含んでいる。また、動画や画像による教材の配信・ダウンロードなど教材の積極的な開発にも役立てばと思っている。また、パソコンを活用した自主教材の開発にもさらに取り組めればと思っている。
 21世紀は始まったばかりだが、これからの21世紀の障害児教育にはパソコンやインタ−ネットが大きな力になっていくはずである。教師自らが積極的にパソコンやインターネットを活用して新しい教育を創造していきたい。

 下記ホームページでこの実践記録を公開中です。
●障害児教育&MAC&JAVA http://www.sikasenbey.or.jp/~ueshima/ 


ueshima@sikasenbey.or.jp


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